きいやま商店「すごい化学反応が起こりました」ナオト・ インティライミプロデュース、3年ぶり新作『アカサタナ』制作秘話語る
石垣島出身で、兄のリョーサさん、弟のマストさん、従兄弟のだいちゃんさんの、従兄弟・ 兄弟の3人で結成されたエンタメ親族ユニット「きいやま商店」。
2008年に結成して以来、エンターテイメント性に溢れるステージパフォーマンスが老若男女問わず幅広い世代に支持され、多くのファンを魅了してきました。
そんなきいやま商店が、3年ぶりとなる新作ミニアルバム『アカサタナ』を4月28日にリリース。それまで、1年に1作品を発表するペースで活動を続けてきた彼らのファンにとって、待望の1枚と言えるでしょう。
また、セルフプロデュースを続けてきたきいやま商店ですが、今回初めて、19年来の盟友だというナオト・ インティライミさんをプロデューサーに迎えました。
今回は、きいやま商店の3人に、ナオト・インティライミさんと行ったミニアルバムの制作についてや作品に込めた思いなど、たっぷりお話を伺いました!
―ミニアルバム『アカサタナ』のリリースおめでとうございます!実に3年ぶりの新作となりますが、今はどんなお気持ちですか?
だいちゃん:久しぶりにアルバムを出せるので、めちゃめちゃ嬉しいです。
リョーサ:コロナでライブができなくなって、レコーディング中心の生活になったのですが、時間がいっぱいあったので、いい曲ができました。それをみんなに発表できることが嬉しいです。今回、ナオト・インティライミがプロデューサーとして入ったことによって変化したきいやまが聞けると思いますので、皆さんの反応がはやく知りたいです。
マスト:コロナになってみんなに会えなくなったので、新しい曲を届けたいなと思っていました。5曲入りですが、この5曲は濃い内容になっています。これが届けられることが嬉しいです。
―ファンの方にとってはまさに待望の1枚ですね。皆さんは、3年前まではコンスタントに新作を発表されていました。今回、3年の時間が空いたのは何か理由があったのでしょうか。
リョーサ:今までは1年間に1枚ずつ出していたのですが、僕らがこだわって、事務所の社長に「いい曲ができるまで待ってください」とお願いしました。それで3年空いたのですが、やっといい曲ができました。
―先ほどリョーサさんからもお話がありましたが、今回、19年来の盟友というナオト・インティライミさんがプロデューサーとして参加されています。ナオトさんがこの作品に加わることになった経緯はどんなものだったんでしょうか?
マスト:曲ができるたびに、リリース日を決めないでレコーディングはしていました。コロナ禍というのもあり、積極的にレコーディングはしていたのですが、3人だけでやっていると、いいのか悪いのかがだんだん分からなくなってくるんですよ。
それで「誰かに聞いてもらいたいな」と思ったときに、「そうだ、ナオトがいるじゃないか」と。それで、ナオト・インティライミに1曲聞いてもらったら「めっちゃいんだけど、ここをああしたらもっといい」、「この歌詞をこうしたら」、「こういう歌いまわしにした方がいい」といったことをはじめ、細かいサウンドについても色々と意見を聞かせてくれました。それで直してみたら、めっちゃ良くなったんですよ。
それで「ナオト、めっちゃ良くなったよ!」、「もう1曲!」という流れになって、そうしたら、「それなら、一緒にやらんか?」という流れになりました。
ナオトが加わったことによって、それまで3人で作っていたものは一旦保留にして、4人で楽曲を作りました。最初にナオトに聞いてもらった「海に行こう」は入っているのですが、それ以外はナオトと作った曲です。
―ナオトさんとは19年来の盟友、とのことですが、どんな出会い方をされたんですか?
だいちゃん:3人がそれぞれ別のバンドをやっていて、僕とマストが東京に住んでいました。リョーサは福岡にいたのですが、僕とマストの共通の友人の紹介でナオトと出会いました。
お互いにぜんぜん売れていなかったころですが、意気投合して、お互いのライブを観に行ったりしました。あとはサッカーをやったり。それからどんどん仲良くなっていった感じです。
―本当にご友人なんですね。
マスト:そうですね。一緒に音楽をやったことはこれまでなかったですね。
だいちゃん:確かに、カラオケくらいじゃないですかね。
―ナオトさんとの制作はどのように進んでいったのですか?
だいちゃん:僕らがいつもやっているレコーディングとは違っていて新鮮で楽しかったです。歌い方ひとつにしても、細かく見るんだなということは感じました。もともとある言葉のイントネーションをしっかりとメロディに乗せるとか。そういうことは僕らにとっては刺激的でした。
マスト:一番違ったのは、ナオトが「歌詞を3人それぞれで書いてくれ」と言うのです。今までは3人で集まって書いていたのですが、今回は、それぞれが書いた歌詞をナオトに送って、それをナオトがうまくまとめてくれました。
めちゃくちゃいい歌詞だったので、「いいね」と声を掛けたら、「3人が書いた歌詞だよ」って。もちろんナオトが手直しをしてくれたりしたのでしょうが、プロデュースってすごいなと感じました。
僕らは、他の2人の歌詞を知らないので、どの部分が誰が書いた歌詞なのか分からないのですが、その作業は面白かったです。
―制作はリモートが中心になったと思いますが、それまでのレコーディングとの違いは感じられましたか?
マスト:ほぼリモートだったのですが、どうだろう。
だいちゃん:僕はやりやすくて、制作も早く進んだように感じました。
マスト:ナオトは思いついたらすぐに投げかけるんです。「明日までにこれをくれ」とか。リモートだからこそ、このスピード感でできたのかもしれないですし、離れていても色々なことができるんだなと感じました。
―改めて、『アカサタナ』がどんなアルバムに仕上がったのかを教えてください。
だいちゃん:きいやまにとって、最高のアルバムができたのではと僕は思っています。僕らにはない引き出しをナオトが色んな形でアレンジしてくれたので、きいやまらしさも残りつつ、ナオトのサウンドも入ってきました。しっかりと融合できたと思います。ひと言で言ったら、ようやく売れたなと感じています(笑)
リョーサ:今までは基本的に自分たちのプロデュースでやっていたのですが、ナオトがプロデューサーで入ってくれて、すごい化学反応が起こりました。
新しいきいやまサウンドとでも言いますか、今までのきいやまのファンの方ももちろん喜ぶと思いますが、僕らのことを知らない方も全曲好きになると思います。今どきのサウンドといいますか、沖縄になかった新しい沖縄サウンドになっています。それがめちゃめちゃ嬉しいです。
「推し曲」を選ぶのが大変でどの曲にしようかなと思ったのですが、やはり「きいやまのアカサタナ」になりました。僕ら12年目なのですが、新しいことが詰まっていて、またイチから、デビューしたばかりのような新鮮な感覚で聞けると思いますので、初めて聴く方にとっても全部楽しめる1枚になっています。全曲、聴いてほしいです。
マスト:ナオトがこだわっていたことが、きいやまらしさを無くさないことと、新しいきいやまを出すことの2つなんです。両極端なのですが、それがマッチしました。
実は、新しいお客さんに聴いてもらおうという思いがあったんですよ。初めてきいやまを聴いた人がファンになってくれるサウンドと、歌詞と、メロディーといいますか、それが本当に出せているアルバムになっていると思います。このアルバムで新しいきいやまのファンの方が増えるんじゃないかなと。
リョーサ:先日、MVをYouTubeにあげたんですが、USENでがんがん流れているみたいで「バズっていたりするわけでもないし、名前も知らないのですが、流れてきて耳から離れない」というコメントがありました。新しい人がいっぱい聴いてくれています。ナオト、すごいなと思いました。
―先ほど、“推し曲”を選ぶことに苦労したとおっしゃっていましたが、その中でも皆さんそれぞれ思い入れのある楽曲を教えて頂けますか?
リョーサ:すべてに思い入れがあります。「ぼくらの大冒険」とかはいいかなと思いますが、僕的には、「アノコトバ」ですかね。きいやまはあまりラブソングがないのですが、やはり、ちょっと歌詞が恥ずかしいじゃないですか。ナオトからこの楽曲をもらったのですが、すごいなと。いつも3人で集まって歌詞を書くので、ラブソングの歌詞は恥ずかしくて本音を言えないんですよ。
今回は、1人ずつナオトに歌詞を送ったんですが、ナオト以外には見られることはないので、本音を全部書いて送ったんです。なので本気の、渾身のラブソングになっています。まだCDができあがっていないのですが、できあがったら、嫁さんに聴かせようと思っています。
だいちゃん:僕は、「Chill Chill」です。これはゼロから作ったのですが、作り方が僕たちにとって初めての方法だったので、楽しかったんですよね。
まずリズムだけあって、エンジニアさんがそばにいてくれて、僕ら3人でアドリブで歌をどんどん録音していく手法でした。それを5回繰り返してナオトに送りました。アドリブをナオトがちゃんと1曲にまとめてくれたんです。
マスト:今となっては誰がどこを歌っているのか覚えていないです。
だいちゃん:2日くらいで、全部完成したもんね。ものすごく面白い作り方だなと思いました。
―その作り方もナオトさんからの提案だったのですか?
だいちゃん:そうなんです。「海外のアメリカとかのアーティストはこうやって作るのだよ」みたいな。なんでも、「ちょっと歌ってこうよ」みたいなノリで組み合わせていくそうなんです。その海外のやり方をきいやまに持ってきた感じです。
マスト:個人的な“推し曲”も、「きいやまのアカサタナ」と言いたいのですが、実は、「ぼくらの大冒険」という曲がめちゃくちゃ好きです。みんなそうだと思うけど、これが実は、陰の推し曲だったのです。
ナオトが最初にメロディーを書き上げてきたときに、ビックリしました。コード進行とリズムだけは僕らが作ったやつがあったのですが、ナオトが編集してくれて、ぜんぜん違うものになりました。
「“子どものときの思い出”をテーマに歌詞を書いて」ってナオトから言われて、3人で書いて送って。そうしたら、ナオトがアカペラで音源を送ってきてくれたんですよ。楽しいことを歌っているのですが「なんか泣けるな、いい歌だな」と感じました。
だいちゃん:朝の7時15分にアカペラのボイスメモが届いたのを覚えてます。よく朝から歌えるなと思いましたが(笑) 何だろうと思って聞いたときに、めちゃめちゃ感動しました。ナオトは思い立ったら、すぐに行動する人間なんで。
―ファンの方からは3年ぶりのアルバムリリースに対して、どんな反応がありましたか?
だいちゃん:ファンの方はめちゃめちゃ喜んでくれています。「ナオトがプロデュースだ!」という反応も大きかったです。きいやまも久しぶりのアルバムになるので、ファンの方も待ちわびていたと思うし、早く聞きたくてうずうずしている感じがSNSからも伝わってきます。
―ファンの方は、ナオトさんと皆さんの交流をご存じなのでしょうか?
マスト:先ほど、音楽を一緒にやったことがないと言いましたが、最近、僕らのイベントに出てもらったり、ナオトが石垣島でライブをやったときにゲストで呼んでもらったりはしてたんです。それで、ナオトのファンがきいやまのファンになってくれたり、逆もあったりして、親交があることは知ってくれていると思います。
―ファンのみなさんは、ナオトさんがプロデューサーとして参加することを知ったときは嬉しかったでしょうね。
マスト:そうですね。特に共通のファンはすごく喜んでいますね。
―MVはどういうコンセプトで撮影したのですか?
だいちゃん:このMVも、今、石垣島でも話題になっています。MVを制作してくれたのは若い子が集まった映像チームなのですが、その子たちにアイデアを全部、任せようとなりました。
マスト:それで、TikTokっぽく撮ろう、ということになりました。俺たちはTikTokをやったことがないのですが、沖縄でTikTokをやってバズっている若い人たちを連れてきてくれて、一緒に参加してもらいました。それをキッカケに僕らもTikTokを始めたんです。何をあげていいか分からないので、まだ動画は3つしかあげていませんが(笑)
リョーサ:僕たちは20代、30代の若いファンの方が少なかったのですが、MVを若い人たちが観てくれて、YouTubeで「何々さん、かっこいい!」ってコメントしてくれています。それだけ、クリエーターチームのアイデアがすごかったです。
だいちゃん:TikTokerの方たちも、昔から知っていて、きいやまのことも知っているので、撮影も楽しかったです。仲間なので緊張することなくできました。
―具体的にどんなアイデアに感心されましたか?
リョーサ:YouTubeって普通、横画面だと思いますが、TikTokerが縦なので、画面を分割して縦画面でやったんですよ。それが斬新でした。あとは、3分割した画面を繋げてTikTokのエフェクトを入れるんです。僕らにとっては初めての経験で、すごかったです。僕たちにはない発想だったので、このクリエーターの方たちが作らなかったら今回のMVはできなかったです。
だいちゃん:TikTok風に作ってはいるのですが、実はTikTokではできない映像なんですよ。そこが面白いですね。TikTokがMVになったみたいな感じで、新しくて面白いかなと思います。
―サビのフリは、元Dragon AshのダンサーのDRI-Vさんが担当されたとお聞きしました。初めて、フリをご覧になったときにどんな印象を受けましたか?
だいちゃん:ムズ、です! これ大丈夫か? ムズくない?って(笑)
リョーサ:難し過ぎて、最初は踊れなくて、「もうちょっとやさしくできない?」ってお願いしました。DRI-Vの中でもめっちゃ簡単なものを送ってきてくれたのですが、僕らがダンスができないので。
そうしたら、次に送られてきたものがバッチリで最高でした。最初、手の動きができなかったのですが、リモートで、こうやるんだよと教えてもらって。
マスト:エイサーとか、沖縄っぽさも入れてくれていたので、有難かったです。踊りやすいし、いいダンスができました(笑)
リョーサ:TikTokでみんながすぐにできるような踊りをDRI-Vに考えてもらいました。
だいちゃん:うちの5歳の娘はすぐに真似しようとしていました。子どもが真似しようとするなら、めっちゃいいなと思いました。
―ライブを中心に活動されてきた中、コロナで思うようにライブができない日々が続いていますね。
だいちゃん:長いなと思っています。早くライブをしたいし、各地に行って色んなファンの方に会って、早く僕らのステージを観てほしいなと思っています。いつまで続くのかなと、毎日思っています。
―5月には東京でのライブも予定されていますが、それ以外に決まっている予定はありますか。
マスト:沖縄で発売記念のワンマンライブがあります。
リョーサ:7月18日になるのですが、お客さんを入れての久しぶりのワンマンライブになります。やっとできるので、楽しみです。去年の7月に1回、野外で4000人入るところにお客さん100名だけ入れてやったのですが、それ以来、沖縄では1年ぶりのライブになります。今回は、キャパの半分にはなるのですが、たくさんの人の前でできるので、ファンもめちゃくちゃ楽しみだと思います。
―最後に、アルバムを楽しみにされている方にメッセージをお願いします。
だいちゃん:早くアルバムをみなさんに届けたいと思っていたので、僕らも4月28日を楽しみにしています。僕らを知らない方にも聞きやすいアルバムになっていますので、色んな方に聴いてもらえたら嬉しいなと思います。
リョーサ:本当にお待たせしましたという感じです。コロナ禍で、世界が不安と闘っていると思います。同じように世の中が暗かった「3.11」のときも僕らは活動をしていて、みんなが笑えるような音楽を届けたら、みんなが「元気出た」と言って応援してくれました。ナオトの楽曲もめちゃくちゃ元気が出ます。今、コロナで大変な思いをしている人がたくさんいると思いますが、これを聴いて、世の中が元気になってくれたらいいなと思っています。
マスト:ファンのみなさん、お待たせしました。ナオトのファンのみなさん、よろしくお願いします。新しくきいやま商店を知ってくれた方も、きいやま商店は色んな音楽をやっていて、YouTubeに色んな動画をあげたりしています。ぜひ、きいやま商店をよろしくお願いします。
―本日はありがとうございました!