15歳の新人俳優・和田庵、親子役を演じた尾野真千子との“絆”と印象的な言葉を語る「必ずその役になりきって…」
ーー和田さんは、主演の尾野真千子さん演じる良子の息子・純平役を演じられていますが、息子役を演じるにあたって準備したことや、役作りの工夫などはありますか?
和田庵さん(以下:和田):尾野さんはとても優しくて話しやすい人だったので、親子役もすぐに馴染めました。
僕の演じる純平は大人しくて勉強が出来る少年で実際の僕とはだいぶ違います。
僕は体を動かすのが大好きで勉強が苦手なので。
真逆の役だったので、クラスのそういう友達をイメージしてその友達を演じるような感じを心がけました。
後は眼鏡に慣れるため日常生活でも眼鏡をかけたりしてました。
ーー尾野さんとの特に印象的なエピソードがあれば、教えてください。
和田:お会いする前は勝手なイメージで怖い人だと思っていたのですが、初めてご挨拶した時もそうですけど、すごく明るくて優しくて、そして面白い人で、毎日の撮影が楽しみでした。
自転車で土手沿いを2人乗りをするシーンがあって結構長い距離を尾野さんが漕いで僕が後ろに乗って何度も走るんですが、カットの後また初めの位置に戻る時、尾野さんはいつも僕を乗せたまま戻ってくれて、僕は「重いので、降ります」と言うのですが、尾野さんはいつも「いいから、いくよー」と笑いながらスピードを上げていくんです。
申し訳ない気持ちと嬉しさで、僕はいつも苦笑いしてました。
ーー今回の映画出演で学んだこと、今後に活かしたいことなどはありますか?
和田:石井監督のリアルな人間の世界観に触れたこと、尾野真千子さんの圧倒的な演技力を目の前で見れたことは学びになったと思います。
尾野さんは泣きの演技では、必ずその役になりきって泣くというのです。その役が泣く理由以外の理由で泣くのはごまかして逃げてる気がするからそれはやらないと言っていたのが印象的だったし感動しました。
石井監督と尾野真千子さんからのアドバイスを糧にこれからも演技を勉強していきます。
ーー和田さんは、今作について「純平を演じて精神的に成長できた」とコメントされていますが、具体的にどのような部分でそう感じられますか?
和田:純平の役は自分と歳が近い設定だったので、母子家庭やイジメなど純平が見ている世界がとても衝撃的でした。
その役を演じ自分と重ねながら自分がどれだけ恵まれているかを考えさせられました。
そういう意味で少しだけ成長出来た気がします。
ーー映画「茜色に焼かれる」のどんなところに注目してほしいですか?
和田:注目点は主人公の尾野さんの迫真の演技力のスゴさです。
僕は息子役なのですが尾野さんの芝居にどんどん引き込まれていき、気づいたら鳥肌が立っていたこともありました。
僕も尾野さんに引き上げてもらって良い演技が出来たのではないかなと思います。
ーー俳優という仕事のどのような点に、やりがいや楽しさを感じますか?
和田:僕は役者の仕事が大好きです。
どんなところがと言われると、子供の頃から色んな作品に出演させてもらって、TVで見ている時にはわからなかったのですが、すごい沢山の人達が年齢も性別も関係なく、1つの作品を本気で作っているということ。
そしてその一員として参加して作品を作り上げる大変さと、それ以上に出来上がった時の喜びを知ってしまったからです。
ーー目標にしている俳優さんはいますか?また、今後どのような俳優になりたいですか?
和田:目標にしているというか尊敬している俳優さんは仲野太賀さんです。
演技の引き出しの多さというか幅が広くて、コメディな役からシリアスな役まで完璧にこなす素晴らしい俳優さんだと思います。
僕も演技の幅を広げて、どんな監督の要望にも応えられる俳優になりたいです。
ーー今後チャレンジしてみたい役柄はありますか?
和田:チャレンジしてみたい役は「るろうに剣心」や「キングダム」のような殺陣(たて)のアクションをする役です。現実では剣は握れませんのでとても興味があります。
後は趣味でスケボーをしているのでスケーター役なんて来たらテンション上がりますね。
ーーもし10年後の未来の自分にメッセージを送るとしたら、どんな言葉をかけますか?
和田:「10年後の和田庵へ、今も俳優を続けていると思うけど、決して初心を忘れずにいてください、そしてスケボーも頑張れ」
ーー和田さんはカナダに留学されていたということですが、留学中の最も印象に残っている思い出は何ですか?
和田:全く英語を話せない状態からカナダへ渡って現地の公立校だったので日本人も居なくて最初は苦労するよと言われていたのですが、僕はボディランゲージだけで何人か友達が出来たのでラッキーでした。
少し英語が話せるようになった時、たまたま学校の廊下で口ずさんでいたオアシスの「don’t look back in anger」を音楽の先生に聞かれて「いいね、ライブ出ない?」と言われて思わず「OK」と答えてしまい、そのまま全校生徒の前で歌うハメになったのですが、その後皆と仲良くなれたのはいい思い出です。
ーー留学の前と後で、ご自身の“ここが変わった、成長した”と感じる部分はありますか?
和田:ホストファミリーも日本語が話せないのですごく大変でしたね。
家でも学校でも言葉が通じない環境はストレスだったし寂しかったです。
ただ、定められた生活費を考えながら使ったり洗濯や掃除も自分でしないといけなかったので少しは自立できたかなと思います。
また留学するまでは外国の方に対して少し怖いイメージがあったのですが、今では国籍や肌の色に対する偏見などは全くありません。
ーー和田さんはスケートボードに熱心に打ち込んでいるそうですが、スケートボードのどんなところに魅力を感じますか?
和田:カナダはスケボーがとても盛んで、僕も軽い気持ちで始めたのですが、ハマってしまい今では毎日練習しています。
色々な技があって、その殆どが怪我のリスクを伴い危険なのですが、技一つ一つに個性があって特に難易度の高い技が決まった時の達成感が最高なんです。
ーーファッションにも関心があるということですが、普段、服を選ぶ上でのこだわりはありますか?
和田:やっぱりスケボーする時はスケーター系のファッションが多いですね。
モード系の洋服も好きでスケボーしない時はそういう格好をしています。
特にドメスティックブランドの「undercover」や「comme des garcons」が好きなのですが高くてなかなか買えないので大事に着ています。
ーー映画「茜色に焼かれる」を楽しみにされている方へ、メッセージをお願いします。
和田:「茜色に焼かれる」はコロナ禍の現代を描いていて、そんな中、理不尽や不条理に必死に立ち向かい、それでも幸せを願って戦う母と子の物語です。
今コロナ禍で世界中が弱っている中で、この映画を観て少しでもあったかい気持ちになってもらえたらと思います。
この映画はきっと皆さまにとって忘れられない作品になると信じています。
【映画情報】
2021年5月21日より全国公開
映画『茜色に焼かれる』
<出演>
尾野真千子
和田 庵 片山友希 大塚ヒロタ 芹澤興人 笠原秀幸 泉澤祐希 前田 勝 コージ・トクダ
前田亜季 鶴見辰吾 嶋田久作 / オダギリジョー 永瀬正敏
<監督・脚本・編集>
石井裕也