AK-69と¥ellow Bucksが一夜限りの特別ライブ「AK¥B」を日本ガイシホールで開催!満員の観客が熱狂

2024.2.27 18:00

2024年2月24日(土)、愛知県名古屋市の日本ガイシホールでAK-69と¥ellow Bucksによるスペシャルツーマンライブ「AK¥B」が開催された。直前にリリースされた共作シングル“NOROSHI”、およびそれを含む共作EP「Flying To The Top」を引っ提げたこのライブは、2人の地元での1公演のみ。満月の夜に行われるエクスクルーシブなライブのチケットは前売りで完売し、歴史的な一幕を目撃しようとおよそ8,000人の観客が会場へと詰めかけた。

ライブの構成は、AK-69と¥ellow Bucksのデュオパートが3回と、各20分ほどのソロパートが2回ずつ繰り返される形。共作・共演曲をはじめ、それぞれが客演参加した“Balls Out Remix”や“THE RED MAGIC Remix”といったこの日限りの特別な楽曲も披露された。詳しい演目は文末のリストを参照いただくとして、ここでは今回のライブが持つ“意義”を軸に据えたい。

この夜の出来事は、ある意味“必然”だったのかもしれない。2011年9月3日(土)にAK-69が開催した、アルバム「THE RED MAGIC」のリリースツアーファイナル。オリコン総合チャート3位に食い込む大健闘を見せ、ヒップホップのみならず日本の音楽シーンに“旋風”を巻き起こした男が、台風の直撃を受ける中で敢行したこのワンマンショウの会場は、今回と同じく日本ガイシホール。観客席には、AK-69のテーマカラーである赤のバンダナを首に巻く1人の中学生がいた――。その中学生こそが、若かりし日の¥ellow Bucksだった。AK-69の楽曲“Ding Ding Dong 〜心の鐘〜”でヒップホップに魅了され、のちにラッパーを志すきっかけになったと公言している¥ellow Bucksは、今から13年ほど前に、憧れの目で日本ガイシホールのステージ上を見つめていたのである。

視点を2024年に戻そう。アリーナのセンターに設けられたステージには、山の頂を模ったセットが鎮座。雪山で撮影された映像演出のあと、ライブはコーラス隊を従えた“The Mountain”でスタートする。セット中央から¥ellow BucksとAK-69の2人が順に登場し、大歓声の中でそれぞれの歌詞を吐き出していった。“あの時の観客席にいた中学生”が、当時の憧れの対象と同じ舞台を踏んでいるというだけでもヒップホップ的に極めてエモーショナルな瞬間だが、この曲は今回のライブの価値がそれだけには留まらないことを示していた。2人は舞台に設けられた同じ“山頂”にいる。つまりは同じ高みで作品を、そしてこの規模のライブを創り上げられる“同志”であり、“The Mountain”のミュージックビデオ同様、曲の最後でがっちりと交わした握手はそれを端的に表現したシンボルとも言えるだろう。

シークレットゲストとしてYZERRやAwich、Rudebwoy Faceを招き入れ、観客を大きく沸かせたことも¥ellow Bucksソロパートのハイライトの1つではあったが、注目したいのはその流れの中に、自身が夢を叶えてAK-69に肩を並べるラッパーになるまでのストーリーが詰まっていた点だ。特に、地元の仲間への思いがにじむ “Trust in Bucks”や、礎となった名古屋の街へ捧げる“You Made Me”といった楽曲に綴った思いは改めて観客の感情を揺さぶるもので、かつ“歌っているのがこの場所であること”も最高のエッセンスとなっていたように思う。また、“ヤングトウカイテイオー”で歌った「AKにM.O.S.A.D., Phobia DJ RYOW/肩並べたいという思いで韻を踏む今日」というラインが現実になっているまさに今、気後れせず魅せた圧巻のパフォーマンスにも目を見張るものがあった。臆することない性格は彼の持ち味でもあるが、2022年11月に開催した初のワンマンライブ「The Show ’22」の頃と比べても、さらなる自信みなぎるステージングへと進化しており、先に触れたゲストの存在を含めて、ネクストジェネレーションが有する大きなパワーを感じる時間だった。

そして、「THE RED MAGIC」リリースツアーファイナルのセットリスト同様に“No.69”からスタートしたAK-69ソロパートは、たっぷりのエモーションとともに相変わらずのライブ巧者ぶりを見せつける内容。同ツアーファイナルを彷彿させる楽曲の数々は自身のキャリアのステップアップをしかと表現していたが、一方でそれらの楽曲が同時進行的に1人のラップスターの誕生にも大きな役割を果たしていたと考えながら観ていると、その感慨深さも一層際立った。さらにAK-69は、兄貴分として慕うG.CUEらが所属するクルー“W.C.C.”の刺繍が入った、2011年9月と同じ「ディッキーズ」の黒いセットアップも着用。当時の¥ellow Bucksの憧れが目の前に立つAK-69だったように、AK-69も会場を訪れていたDJ MOTOや彼が率いるW.C.C.に対して、「育ての親が居なければ、子は存在しない」と感謝を口にしていたシーンが非常に印象的だった。

会場規模や動員数もライブの大切な指標ではあるが、今回の「AK¥B」で最も重要視すべきは、そういった指標をも超越し得る“情緒的な出来事”を見事にショウアップしたことだろう。現在はともにシーンの第一線で活躍する2人が世代を超えてリンクした裏には、過去から続くさまざまな“必然”的道筋がある。観る者にそれをわかりやすく示してくれた。ショウのラストにAK-69と¥ellow Bucksは、今回のライブを観た若い観客の中から再び自分たちのようなアーティストが出てくる未来を切に願っていたが、それは名古屋のみならず、日本のヒップホップが今後さらに盛り上がっていくうえでも重要なポイントであるように感じた。

AK-69と¥ellow Bucksにとって、目にした観客にとって、そして地元やシーンにとって――。この日のライブは、名古屋・日本ガイシホールで開催されたことでより大きな意義を持ったと言えそうだ。ライブ冒頭のアカペラパートに、「名古屋、東海、再びここに起こす嵐」というフレーズがあった。街のランドマークとしてそびえ立つ名古屋駅のツインタワーの如く、現在の名古屋“052”ヒップホップを象徴するAK-69と¥ellow Bucks。この両名による渾身の140分は、それを目にしたすべての人の大きな刺激となったに違いない。地元・名古屋で再び上げた狼煙を合図に彼らは、街を背負ってそれぞれの道で次の山へと向かう。

Text by Kazuhiro Yoshihashi

【2024.02.24(Sat) スペシャルツーマンライブ「AK¥B」セットリスト】

※客演表記は当日の参加アーティスト
M01. Intro
M02. The Mountain
M03. Road to GAISHI HALL (Acapella)
M04. Got It All
M05. I’m the shit
M06. ヤングトウカイテイオー
M07. Ride With Me
M08. My Resort with Tee
M09. Asian Flow with Tee
M10. With My Way with Ninja We Made It.
M11. Need A Dr.
M12. Money Dance
M13. Money in the Bag
M14. Yessir
M15. No.69
M16. Guess Who’s Back?
M17. IRON HORSE -No Mark-
M18. Only God Can Judge Me
M19. ロッカールーム -Go Hard or Go Home-
M20. Lookin’ In My Eyez
M21. 街模様
M22. My Love
M23. F with U
M24. Jamming
M25. Panty Wetter
M26. Way Up
M27. 博徒2020 feat. SOCKS, “E”qual
M28. WHO ARE U? Remix feat. “E”qual
M29. I’m Back
M30. Higher feat. YZERR
M31. Wow Wow Wow
M32. Crown feat. Awich
M33. GIOTF
M34. Light It Up feat. Rudebwoy Face
M35. You Made Me
M36. Trust in Bucks
M37. Balls Out Remix (feat. AK-69)
M38. 雨音
M39. START IT AGAIN
M40. And I Love You So
M41. CUT SOLO
M42. Flying B
M43. Ride Wit Us
M44. THE RED MAGIC Remix (feat. ¥ellow Bucks)
M45. Ding Ding Dong 〜心の鐘〜
M46. Bussin’ Remix feat. MaRI & C.O.S.A.
M47. NOROSHI

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