羊文学はどう“世界で聴かれるバンド”になったのか 「more than words」、海外ツアーから見る飛躍の軌跡

2026.9.10 12:15

羊文学の近年の歩みを振り返ると、「いつの間にここまで来たのだろう」と思う。2016年には『FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)』の新人アーティストの登竜門「ROOKIE A GO-GO」に出演していたバンドが、いまではアメリカ、アジア、ヨーロッパでツアーを行い、国内では国立代々木競技場 第一体育館での2DAYS公演を控えているのだ。

振り返れば、そこに至るまでにはいくつもの節目があった。2022年のアルバム『our hope』で作品への評価を高め、翌2023年には「more than words」が大きな広がりを見せる。そして2024年以降、海外でのライブ活動も本格化していった。そうした転機を重ねるたびに、羊文学の活動のスケールは少しずつ大きくなっていった。

では、羊文学はどのようにして“世界で聴かれるバンド”へと歩みを進めてきたのか。これまでの活動を振り返りながら、国内外で存在感を高めてきた背景と、その現在地を見つめてみたい。

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【国内で評価を高めてきた羊文学の歩み】

羊文学は、繊細さと力強さを併せ持ったサウンドを鳴らしてきたオルタナティブロックバンドだ。2016年には『FUJI ROCK FESTIVAL』の「ROOKIE A GO-GO」に出演。2018年には初のフルアルバム『若者たちへ』をリリースし、インディーズシーンで作品とライブを重ねていった。

2020年にはF.C.L.S.からメジャーデビューを果たし、同年12月にはメジャー1stアルバム『POWERS』を発表。2022年にはアルバム『our hope』をリリースした。「光るとき」「マヨイガ」などを収録した同作は、第15回CDショップ大賞2023の大賞<青>を受賞し、作品そのものへの評価をさらに高めた一枚となった。

ライブの規模も、それに伴って大きくなっていった。『FUJI ROCK FESTIVAL』では、2016年の「ROOKIE A GO-GO」出演を経て、2021年にはRED MARQUEE、2023年にはGREEN STAGEに登場。こうして出演歴を振り返ると、羊文学が国内のロックシーンで少しずつ存在感を大きくしてきたことが実感できる。

【「more than words」で変わった、音楽の届く範囲】

2023年9月にリリースされた「more than words」は、羊文学にとって明確な転機となった。TVアニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」のエンディングテーマに起用された同曲は、配信開始から数時間で複数の配信サイトで1位を獲得。ミュージックビデオも自身最速となる公開1週間で100万回再生を突破した。その後、全世界でのストリーミング再生回数は2億回を超え、日本レコード協会からプラチナ認定も受けている。

「more than words」が出た当時から反響の大きさは感じていたが、それまで羊文学を見てきた側としても、「ここでまた一段、届く場所が広がったな」と思ったのを覚えている。2億回という数字まで到達した現在から振り返ると、この曲が羊文学にもたらしたものの大きさがよりはっきり見えてくる。『呪術廻戦』を通じ、それまで羊文学を知らなかった海外のリスナーにも音楽が届くようになった。

ただ、羊文学が海外へ目を向けたのは「more than words」以降のことではない。同曲のリリースに先駆けた2023年6月には、台北・Legacy Taipeiで自身初となる海外単独公演を開催している。さらに2024年には、ソウル、北京、上海、深圳、広州、台北、バンコクを巡る初のアジアツアーを実施。全公演がソールドアウトし、その反響を受けてシンガポール、クアラルンプール、マニラ、香港で追加公演も行われた。

つまり「more than words」は海外進出のきっかけというより、すでに広がり始めていた羊文学の音楽を、さらに多くのリスナーへ届けた一曲と捉えるほうが近い。ストリーミングを通じて“聴かれる”範囲が広がり、その先で現地へ足を運び、ライブを観てもらう。配信で生まれた接点を実際の観客へとつなげていったことも、その後の海外展開を考える上で重要だ。

【2025年、アジアからアメリカ、ヨーロッパへ】

2025年4月には、初のUSツアー『Hitsujibungaku US West Coast Tour 2025』を開催。サンディエゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ポートランドと、アメリカ西海岸の4都市を巡った。

9月からは、アジアツアー『Hitsujibungaku Asia Tour 2025 “いま、ここ (Right now, right here.)”』を開催。ソウル、上海、北京、広州、台北、バンコクを巡り、日本では大阪城ホールと日本武道館2DAYSを含む全8都市9公演を行った。さらに10月には、自身初となるヨーロッパツアーを開催。パリを皮切りに、オランダ、ドイツ、ポーランド、オーストリア、イギリスと、欧州6カ国7都市でライブを行った。2023年の台湾、2024年のアジアを経て、2025年にはアメリカとヨーロッパにも活動の場を拡大。1年間で3大陸を巡るまでになった。

近年の羊文学を見ていて印象的なのは、海外での活動が広がる一方、日本での歩みも止まっていないことだ。横浜アリーナ、日本武道館と国内で会場の規模を大きくしながら、同じ時期にアジア、アメリカ、ヨーロッパでもライブを重ねてきた。どちらかに軸足を置くのではなく、日本と海外の両方で活動の幅を広げてきたことが、ここ数年のスケールアップにつながっている。

【世界を巡った先に待つ、代々木第一体育館】

2026年に入ってからも、羊文学は国内外のさまざまなステージに立っている。6月には台北で開催された『第37回金曲奨授賞式』に、海外の音楽アワードでは初となる国際パフォーマンスゲストとして出演。8月には『SUMMER SONIC(サマーソニック)2026』の東京・大阪両会場に登場し、10月4日には韓国の『2026 Busan International Rock Festival』への出演を控えている。

ここ数年で羊文学が得たものは、単純な知名度や会場規模の拡大だけではない。異なる国や地域でライブを重ね、それぞれの場所で自分たちの音楽がどう受け取られるのかを確かめてきた経験も、バンドにとって大きな財産になっているはずだ。

9月4日からは、初の全国ホールツアー『羊文学 TOUR 2026 “すーーーはーーー”』がスタート。ツアーファイナルは国立代々木競技場 第一体育館2DAYSだ。3大陸を巡った経験を経て、羊文学が日本のステージでどんなライブを見せるのか。代々木第一体育館での2日間は、ここまで広がってきた活動の現在地を示すと同時に、その先の羊文学を占う公演にもなる。

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