シシド・カフカ、即興で音を奏でる『el tempo』で見据えるもの「“不正解はひとつもない”音楽を目指しています」
ーー3月29日配信リリースの『Tokio Ruidoso』についてお話を伺えればと思います。こちらには「maRcha」「la tierra」「Tokio Ruidoso」の計3曲が収録されていますが、それぞれの楽曲の特徴やこだわりについて教えてください。
作品を残すという意味で完全に作り込んだ楽曲を録音することは勿論できました。でも、メンバーと話し合って、今回はel tempoらしく決め事のない完全即興で挑むことに決めました。
意識したことと言えば、360度での音が楽しめるという特性を生かすこと、そしてバリエーションを生むことの2点です。三曲三様の色を楽しんでいただきたいですね。
ーーシシドさんは各曲で奏者の方々にハンドサインを出して音楽を作り上げていますが、コンダクターとして大切にしていることは何ですか?
明確なサインを出すこと、それぞれが演奏しているフレーズを理解すること、踊れる余白を確保すること、それとハプニングを楽しむこと、でしょうか。
特に最後が難しいんですよ。音で生まれたハプニングを楽しむだけではなく、思ったようにいかない、何も展開が思いつかないというハプニングも楽しんで、サインを組み合わせて変化を生み出しており、師匠の言う“不正解はひとつもない”音楽を目指しています。
ーーレコーディング時の印象的なエピソードなどがあれば教えてください。
初めての作品、そして録音の都合上いつもに比べて演者同士の距離感が生まれたこともあり、皆さんの顔つきがいつも以上に真剣だったことが個人的には印象的でした。ライブで見せる表情がいかにリアルで素敵なのか再確認できましたね。
あとは、音や構成に対する皆さんの客観性でしょうか。私はいつもできなかったことに捉われがちなのですが、皆さんの冷静な意見をそれぞれ聞くことができ、とても勉強になりました。
ーー今回は通常の配信に加え、ソニーの立体音響技術を用いた「360 Reality Audio」でのリリースもされましたが、どのような点に注目してほしいですか?
10人という大所帯での演奏に注目してほしいです。
それぞれの音がクリアに聴こえるところもありますし、まるでコンダクターの立ち位置で音を聴いているかのような感覚を味わえます。el tempoのメンバーが自身に向かって演奏しているような体感を楽しんでいただけるのではないかなぁと。
『360 Reality Audio LIVE』では映像を一緒に見ることができるのもポイントです。普段は見ることが難しいクローズアップした画も楽しめるので、ぜひ!
ーーシシドさんは女優やラジオパーソナリティーなど、さまざまな分野でも活躍されていらっしゃいますが、『el tempo』としての活動にはどのようなやりがいを感じますか?
ハンドサインの組み合わせで音が変わるのですが、限られたツールを駆使して無限の楽しさを生み出していく挑戦に、同じメンバーと向き合って行けることでしょうか。
人が入れ替わっていく中で生まれる化学反応も楽しいものですが、じっくりと向き合い理解を深めながら進んでいくのもまた楽しいんです!
そして、たまに予想もしていなかった結果に出会えた時、その喜びを共有できる仲間がいることが、私にとって貴重で嬉しい存在です。
ーー『el tempo』として、今後チャレンジしてみたいこと・挑戦してみたいことはありますか?
el tempoは実際に観て、体感してもらえると解る楽しさが多いように思います。
まずはいろんな方々に目を留めていただきたいので、そういった場所に多く出向くことを精力的に続けたいですね。
子供達が参加しながら楽しめる機会を作ったり、大人たちが開放的に楽しめたり。そんな空間作りをしながらのライブに努めていきたいです。
また、アルゼンチン・ブエノスアイレスにあるハンドサインを教える学校には、学校の先生や、医療関係の方々も多く通っています。
コミュニケーションツールのひとつとして注目され、活用もされているので、ワークショップなどでサインシステムを広めていくことも今後考えていきたいですね。
ーー最後に、ファンの方にメッセージをお願いします。
今回初めてel tempoの音源をリリースしました。ライブが醍醐味のバンドでなかなか難しいと考えていたのですが、『360 Reality Audio』という私たちに向いている形で作品にすることができ嬉しく思います。
いろんな場所にこちらから出向くことがなかなかできていないので、まずは皆さんのお手元で楽しんでいただけるものを届けられることが嬉しいです。ぜひご堪能ください。
そして、ライブでもお会いできますように!