「断ろうか何回も迷いました」初演技・初映画主演に挑戦したシンガーソングライター・桐嶋ノドカが、期待と重圧のかかる大きな転機に直面した心境を告白【インタビュー】
26歳のシンガーソングライター・桐嶋ノドカさん。
彼女は今年、レコード会社の移籍、音楽プロデューサーの小林武史とryo (supercell)がタッグを組む異例のWプロデュースでのCDリリース、そして演技初挑戦にして、映画「爪先の宇宙」で主役の吉河亜紀を演じるなど、目まぐるしい変化と成長を遂げています。
これまで築き上げてきたシンガーソングライターとしてのキャリアの中での新しい一歩と、新たに挑戦した演技というフィールドでの活動。ビッグネームのプロデュースや映画主演など、期待と重圧がかかる中で、大きな転機に直面した彼女の心境を率直に聞いてみました。
自分以外の作詞作曲を歌うことは「新鮮」
ーシンガーソングライターである桐嶋さんですが、新曲の『言葉にしたくてできない言葉を』は、プロデューサーである小林武史さんとryo (supercell)さんの作詞作曲です。初めて自分以外の方が作った楽曲を歌われたそうですが、心境はいかがでしたか?
桐嶋:自分で書いていない曲を歌うこと自体は、当初からあまり違和感はありませんでした。実際にryoさんからのデモを聴いた時は、私には書けない(普段なら隠してしまいそうな)私の内面的な部分をうまく歌詞にして頂いていて、「わたしの歌だ!」と驚きましたし嬉しかったです。メロディはプリプロの過程でかなり変化していったのですが、そういう曲作りも新鮮で楽しんでできました。
ー今回は移籍後初のリリースとなりますが、桐嶋さんの中で変化はありますか?
桐嶋:とにかく自分の感覚に素直に、そしてすべてにおいて妥協することなくやって行きたいなと思っています。そのために周りの人たちに沢山協力して頂いていて、その人たちの思いも含めて今の私の原動力になっています。
ー公開されたMVも桐嶋さんの動きとシンクロした壮大なプロジェクションマッピングが話題となりましたが、撮影中のエピソードがあればお聞かせください。
桐嶋:ちゃんとマッピングの映像に合うように、そして効果的に見えるように動きをつけるのが意外と工夫がいって、何回も撮り直しました!撮影は長丁場でしたが、監督も私もスタッフの皆さんも割と朗らかなタイプだったので終始楽しく撮影できました。
ーシングルの2曲目に収録された『夜を歩いて』は桐嶋さんの作詞ですが、詞にこめた思いなどを聞かせていただけますか?
桐嶋:本当は伝えたい思いがあるんだけれど、上手く伝えられない。変わりたいんだけど、すぐには変われない。一歩前に進む勇気が欲しいけど、逃げてしまいたい。結局一歩踏み出す前に曲は終わるのですが、この温度感が人が変わっていく前夜の実際の気持ちなんじゃないかなって、私自身の経験も込めて書きました。ほんの1ミリくらいでいいので前向きになれる曲にしたいなと思って書きました。
ーライブだとまた違った面も出てきそうな楽曲だなと感じたのですが、生披露するイメージは湧きますか?
桐嶋:この曲は既にライブでも歌っていますが、歌っているとどうしても素直になってしまうと言いますか、弱虫の私のありのままが出てしまいます。でもそれでいい気がしていて、だからこそほとばしるエネルギーがあるというか。ライブで聴くと意外と熱いイメージになるかも知れないですね。
初挑戦の演技で主演を務めた『爪先の宇宙』への思い
ー今回、映画『爪先の宇宙』で桐嶋さんは演技に初挑戦&初主演となりましたが、 オファーを聞いた時の心境はどんなものでしたか?
桐嶋:最初はあまり考えずに面白そうとお返事をしましたが、段々冷静になってまともに務まらないんじゃないかと、断ろうか何回も迷いました。でも主人公のアキちゃんは原作を読んでいて私に重なる部分がすごく多くて、最終的には亜紀ちゃんに背中を押されるような感じで出演を決意しました。
ー主題歌『言葉にしたくてできない言葉を』と、挿入歌『夜を歩いて』が映画の世界観に彩りを添えていますが、映画と楽曲の親和性を感じる点はありますか?
桐嶋:今回は映画のことも多少意識した曲作りでもあったのでまずサウンド面で映画の雰囲気に合うようになっていると思います。歌詞は私と亜紀ちゃんの内面の共通性がかなりあったことと、人の心の弱い部分に向き合った曲を作りたかったので、自然と映画のテーマに繋がっていく楽曲になったと思います。
ー完成された映画をご覧になった感想はいかがですか?
桐嶋:登場するキャラクターみんながそれぞれの心に思いを抱えていて、その繊細な動きを丁寧に捉えた映画だなと思いました。自分の気持ちや思いを伝えたい人のことを自然と思い浮かべてしまう、心が温まる作品だと思います。
ー初めての演技で難しいと思った点はありますか?
桐嶋:沢山あります!笑
表現という括りでは歌も演技も同じですが、角度が全然違うと思いました。
音楽というフィルターを挟まない分、より生身の人と人のコミュニケーションが自然に行われなくてはいけないし、まず自分が自分じゃないという状況はとっても不思議だなと思いました。
ー主人公・亜紀のキャラクターと桐嶋さんに共通する点はありますか?
桐嶋:正直な思いを口にするのが怖くて躊躇ってしまうところ、考えてから行動に移すのに時間がかかるところ、なんでも一人で解決しようとするところ、誰も見ていないところで変なことをしているところなどです。
映画で共演したメンバーたちとの思い出
ー劇中で印象に残っているシーン、セリフはありますか?
桐嶋:親友の朋子と仲直りをするシーンです。私の役はほとんどセリフがなくて、自分の本音を言葉にして相手にぶつける初めてのシーンなので、とても大切にやりました。朋子ちゃん役の美沙玲奈ちゃんと何度もリハーサルをして臨みました。
ー谷内田彰久監督の指導や演出で思い出すことはありますか?
桐嶋:監督はあんまりあれこれ言う人ではないですが、撮影が始まる前に受けていたレッスンの時間に、お互いのこれまでの人生について監督と話した日があって、それが意外と私にとっては役立ったと言うか。何の気なしに今まであまり人に話さなかったようなコンプレックス的なことも話してみて、そのことが役と自分を近づけていくヒントになりました。
ーW主演を務められた北村諒さんの印象や共演時のエピソードがあれば教えてください。
桐嶋:お互いに孤独を愛するタイプだと勝手に思っているので、長い待ち時間も会話に困ることなく無言でも違和感なしで過ごせました。笑
ー北村さん演じる、ちょっとSっぽいけど優しいアンジのような男性をどう思いますか?
桐嶋:個人的には少しも冷たくなく100%優しい人が好きですが..(笑)
冷静で客観的に考えられる人は憧れます。アンジみたいな人の優しいところ見たさに、いろいろちょっかい出してみたくなりますよね。
ー撮影中の楽しかった、嬉しかったエピソードがあれば教えてください。
桐嶋:最後の撮影が終了した後、名残惜しくてインサートで使うスーパーボールが弾ける映像の撮影を手伝ったこと。100個は優に超えるスーパーボールを空に向かって投げてはみんなで拾い集めを何度も繰り返し、子供みたいに笑ったことを思い出します。
ーその反面、大変だったことなどはありますか?
桐嶋:撮影スケジュールがかなりタイトで、深夜から翌夕方くらいまで続くこともあって、眠気との戦いが一番大変でした。眠かったおかげもあり、あまり緊張せずいいリラックス感が得られました。笑
ーこの作品で得たものは音楽活動にどのような影響がありそうですか?
桐嶋:単純に主人公の亜紀ちゃんの姿勢に勇気づけられたこと、
そして演技をするのに必要な、自分や他人の心を受け入れていくこと、自然体でいることなどは歌う事にすごく還元されています。
ー演技という新たなステージに挑戦された桐嶋さんですか、これから挑戦してみたいことはありますか?
桐嶋:ものづくりが好きなので、農業をやりたいです。
ー最後にファンの方にメッセージをお願いします。
桐嶋:これからきっともっと自由奔放に歌を歌って行けると思います。楽しみにしていてください!