ポール・ショーティノ(ラフカット)、27年振りの来日でLAメタル再燃!

2016.11.7 16:29

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「LAメタルの切り札」と言われたラフカット。レコードデビューから32年、そのヴォーカリスト、ポール・ショーティノが愛知県東海市芸術劇場で11月3日、27年ぶりに一夜限りの公演を行った。ラフカットとして2度、3度目は同じくLAメタルのパイオニア的存在、クワイエット・ライオットの新ヴォーカリストとして、そして最後は89年に自身の単独公演から、正に27年の歳月を得て、5度目の来日である。

ショーの前に午後から、『”鉄のまち”東海市 鋼鉄フェスティバル Vol.2「今こそ語る! LAメタル」LIVE & シンポジウム』と題されたイベントとして、パネリストに広瀬和生氏(BURRN!編集長)、増田勇一氏(音楽ライター)、安江正也氏( 芸術劇場総監督)、今回のコンサートのギタリスト、瀬上純氏(Crush40)、そしてポール・ショーティノがLAメタルを振り返り、検証をしていくシンポジウムが開催された。

ラフカットはロニー・ジェームス・ディオの妻であるウェンディ・ディオがマネージメントを手掛け、ロニー自身はデモ・テープや曲作りに手を貸していただけあり、ポールの口から当時の貴重なエピソードが幾つも飛び出した。ラフカットと同時期にLAメタルシーンを滑走していたモトリー・クルーやラット、グレイトホワイトなどに比べ、デビューが出遅れたのは契約先であったワーナーブラザーズのプロデューサー、テッド・テンプルマンが他のアーティストのプロデュースを手掛けていた為に、レコーディングは長期待つ事になってしまった。ポールは「本当はロニーにプロデュースして欲しかった」と当時の胸の内を明かす。しかし、ロニーはラフカットを自分の色に染める恐れを避け、敢えて外部のプロデューサーを待ったと言う。しかし待てど暮らせどテッドが手いっぱいだった為、結局はトム・アロムにプロデュースを依頼したという話はファンの間では有名であるが、「もしラフカットのアルバムがもう少し早くリリースされていたら、また違った形で勢いに乗れたかもしれない 」と当時を振り返り、2時間近くに及ぶ歴史的回想録をポールは一つ一つ丁寧に答えていった。普段から上機嫌なポールは自分で語ったことに自分でボケと突っ込みを入れて小刻みに肩を震わせて笑っていたが、その内容が今一つ訳され切れずうまく場内に伝わらなかった部分が少々名残惜しかった。時々話は脱線しやすいものの、日常会話も含め、ポールは常に人を楽しませる話術や気配りのテクニックにも優れている人だからだ。

2部として18時から開催されたコンサートではポールをサポートするバンドメンバーに、ギター:Jun Senoue (Crush 40)、Nozomu Wakai (Destinia, Mari Hamada)、ベース:Shoyo (CROSS VEIN)、ドラム:Louis Sesto (SOUL DOCTOR)、バックコーラス: 藤井重樹(SLANGRADE/TOKYO ROCK BLASTER) といった“ポール・ショーティノをレスペクトする” HR/HMに精通した極上のミュージャン達が揃い、ラフカットの代表曲、クワイエット・ライオットの曲は勿論の事、85年にアフリカ飢餓救済チャリティー・プロジェクトHear ‘n Aidとして発表されたメタル史上最高傑作シングル「Stars」を含めた80分15曲に渡る熱演を繰り広げた。このバンドはこの日の為に結成されただけでは余りにも惜しい程、クオリティが高く、オーディエンスの誰もが満足いくステージだったのではないだろうか。

今回も80年代にHR/HMを聴いて青春を過ごしてきた者であれば、この『鋼鉄フェスティバル』公演の選曲はかなりの聴き応えだったはずだ。特筆しておくべき事は、ポールがクワイエット・ライオット在籍していた時代以外のナンバーは、本人の希望で亡くなったケヴィン・ダブロウに追悼の意をこめて数曲捧げられた。そして自身のキャリアの中で恩人と言えるロニー・ジェイムス・ディオが中心となって結成したHear ‘N Aidの「Stars」はあの時代のスピリットが蘇えるような圧巻のフィナーレだった。丁度この公演が行われた日、ロニーの妻、ウェンディからタイムリーなメディア発表があった。本国でHear ‘N AidのDVDとCDをリイシュー化し、更に新しいメンバーで新ヴァージョンのHear ‘N Aidプロジェクトを結成するというものだ。大勢のミュージシャンを揃えてレコーディングするにはスケジュール調整の時間がかかる為、来年いっぱいの完成を目途に、2018年のリリースを目指す予定である。

ポールの最大の魅力であるハスキーで深みあるブルージーな歌声は、今回共演したミュージシャンでさえ「演奏しながら泣きそうになった」という程、聴き手の心をぐっと惹きつける。前日のリハーサルに力が入り過ぎ、ステージに立つ前は少し喉の調子が心配ですっかりお気に入りになった温かいしょうが湯を何杯も飲んでいたが、本番では歌っていくにつれ、ポールの声はどんどん円滑に伸びていく。昔に比べ、高いキーが出にくいと本人は言っていたものの、「ショーティノ節」は健在である。

冒頭のMCから「I love Japan」を連発していた通り、ポールは始終ファンへの感謝を絶やさない。愛情をこめて日本の事を敢えて“The land of rising sun”と呼ぶ彼は「日本は世界で一番好きな場所。オーディエンスが最高だ。何故なら今まで他国では演奏中にビール瓶を投げつけられたこともあるし、酔っ払って態度が悪いオーディエンスが終わってから“最高だった”と言ってくる偽善ファンもいたが、日本のファンは礼儀正しいし、とても愛情がある」と心からそう語っていた。この夜は予定外だったが、本人の希望で終演後にミート&グリートを行い、長蛇の列でもご機嫌にファンとの交流を交わしていた。

当時を振り返るとラフカットはヒットするようなシングルに恵まれなく、アルバムも上位にチャートインするような商業的な成功を収めることはなかった。しかしあの時代の産業的シーンに混ざるようなコマーシャルなバンドでもない。ラフカットの楽曲はポール以外のヴォーカルでは考えられない。それが最大の魅力だからこそ、先日LAのALALON とMORCで行われたクラシック・ラインナップによる再結成ライヴでも大喝采を受け、根強いファンが現在においても沢山存在すると証明された。この後、ラフカットは11月25日にLAの老舗クラブ、Whisky A Go Goでライヴが行われる予定だ。近い将来、ラフカットとして再来日する日も期待したい。

最後にショーティノ・セレクションによる「絶対聴いておくべきLAメタルアルバム5選」を選んでいただいた。『Holy Diver / ディオ』『Locke And Key /ドッケン』『Dr.Feelgood /モトリー・クルー』『Out of Cellar / ラット』『Metal Health /クワイエット・ライオット』(順不同)そしてLAメタルではないが『Silent Lucidity /クイーンズライク』を番外編として付け加えた。また、ポール自身は自分の歌のスタイルの違いからそこまでメタルに入れ込んでいた訳ではないと言い、シンガーの視点としてとして好きなバンドを次のように挙げた。ジャーニー、グレイトホワイト、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、バッド・カンパニー、フォーリナー、ホワイトスネイク、ジューダス・プリースト。どのバンドも歌心がある、納得のセレクションと言える。

(取材&テキスト:Keiko “Ginger” Suzuki)
(撮影:塙 薫子)

“鉄のまち”東海市 鋼鉄フェスティバル Vol.2 愛知県東海市芸術劇場 11.3.2016
Paul Shortino Live Set list
01. Rock The USA (ROUGH CUTT / Wants You)
02. Double Trouble (ROUGH CUTT / Wants You)
03. Bad Reputation (ROUGH CUTT / Wants You)
04. Dreamin’ Again (ROUGH CUTT / ROUGH CUTT)
05. Don’t Settle For Less (ROUGH CUTT / Wants You)
06. Dressed to Kill (ROUGH CUTT / ROUGH CUTT)
07. Take Her (ROUGH CUTT / ROUGH CUTT )
08. Don’t Wanna Be Your Fool ( QUIET RIOT / QR)
09. Stay With Me Tonight ( QUIET RIOT / QR)
10. The Wild&The Young ( QUIET RIOT / QR III)
11. The Night Cries Out (For You) (ROUGH CUTT / Wants You)
12. Piece Of My Heart (ROUGH CUTT 1st)
13. Cutt Your Heart Out /Rock The USA(ROUGH CUTT / ROUGH CUTT &Wants You)
14. Bang Your Head ( Metal Health) (QUIET RIOT / Metal Health)
15. Stars (Hear ‘N Aid)

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